原子力開発の黎明期に米国では固体燃料と並んで液体燃料も対等に検討されました。最も有名な熔融塩液体燃料炉は米国オークリッジ国立研究所所長を務めたアルヴィン・ワインバーグ博士主導により1965年に建設されたトリウム熔融塩実験炉MSREです(図1)。4年間の連続無事故運転に成功し、熔融塩液体燃料炉に必要な基礎技術が確立されました。しかし、固体燃料と液体燃料の技術基盤が異なることに加え、トリウムはプルトニウムを生まないためトリウム熔融塩炉は軍事的に無価値であるという理由で、1976年に研究開発は中止されました。一方日本では、古川和男博士がトリウム熔融塩炉の研究開発を継続し、日本独自のトリウム熔融塩炉として1万kW の小型炉のmini FUJIと20万kWの標準型炉のFUJIの設計を完成させ、さらにこれらの実現のために当社TTSを設立しました。古川和男博士は2011年12月14日に世を去りましたが、TTSはその遺志を継いで研究開発に取り組んでいます。
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図1 米国で1965年にアルヴィン・ワインバーグ博士主導により建設されたトリウム熔融塩実験炉MSRE
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地球上に存在する核資源にはウランとトリウムがあります。トリウムからはプルトニウムを生産出来ないため、これまでトリウムは原子炉用燃料としてほとんど使われませんでした。しかし、採掘可能なトリウムは核燃料となるウラン235の何百倍も存在し、平和のための原子力の時代のエネルギー源としてトリウムは有望な核資源です。
TTSは、トリウムを燃料とする熔融塩液体燃料炉であるトリウム熔融塩炉として、最初に2.5万kWの超小型炉商用実証炉を開発し、次いで20万kWの小型商用炉(FUJI)(図2)の開発を目指します。トリウム熔融塩炉は安全性に優れ、核廃棄物処分も容易であり、核武装に繋がるプルトニウムを作りません。炉心構造も単純であり、超小型炉の概念設計では発電コスト約6円/kWhを確認しました。本命の小型炉(FUJI)では5円/kWh程度と見込まれ、将来的には4円/kWhをめざします。 |
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図2TTS設立者の古川和男博士により設計されたトリウム熔融塩炉FUJI
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