新しい原子力が人類を救う

熔融塩液体燃料原子炉実現へ向けた提案

新しい原子力の時代の扉が開かれようとしています

2015年国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は化石燃料消費量の一層の削減により地球温暖化を阻止する低炭素社会実現へ向かう潮流を本格化させました。
我々は原子力が人類の叡智が生んだ優れたエネルギー源であり、低炭素社会実現のカギを握るエネルギーであると考えます。
しかし、原子力が本当に人類に貢献するエネルギーになるためには、安全性、発電コスト、放射性廃棄物、核兵器拡散の四つの問題を解決しなければなりません。当社初代社長古川和男博士はトリウム熔融塩炉がこれらの問題を全て解決できることをその著書「原発安全革命」(文春新書 2011/05出版)で示しました。
原子力イノベーションとして、2015年11月に米国では原子力技術革新加速ゲートウェイ(GAIN)プロジェクトが立ち上がり、2018年11月に日米で原子力分野における研究開発及び産業協力に関する覚書が交わされ、2019年4月に革新炉開発を含む原子力研究開発に向けて経産省と文部科学省との共同の原子力イノベーション促進(NEXIP)イニシアチブが立ち上がりました。
また、米国エネルギー省(DOE)が熔融塩炉開発の産学官合同のチームに初年度600万ドルの支援を決めたことを契機に、数年前より世界的な熔融塩炉開発の流れが出てきています。
TTSは、これまで熔融塩炉開発に具体的に正面から取り組んできた日本で唯一の企業であり、これから本格化する世界の熔融塩炉開発の流れと共同歩調を取り、日本の熔融塩炉開発をリードします。

何故いま熔融塩炉が将来の原子炉の本命として浮上したか?

(その1)原理的安全性

原子炉の安全性確保の為の条件は、(1)緊急時の炉の確実な停止、(2)核物質から放出される崩壊熱の除去、(3)放射性物質の外部流出の防止の三つです。液体燃料原子炉は炉心直下に冷却機能を持つドレンタンク(排出容器)を備えます。大規模地震発生や津波襲来等の緊急時に、液体燃料を炉心から地下ドレンタンクへ排出すると、核反応は直ちに停止します。ドレンタンク内の液体燃料は無電源で冷却され、崩壊熱が除去されると共に凝固します。万一原子炉が破損しても放射性物質は外部に流出しません。凝固した燃料は緊急事態解除後溶解して原子炉に戻します。

(その2)低い発電コスト

20万kWe熔融塩炉の発電コスト約5円/kWhの算定根拠については、米国での熔融塩増殖炉(MSBR)概念設計に対する論文を基に、小型化の影響を推定したものであり、この金額は世界の熔融塩炉ベンチャーが公表している標準的な数値の範囲内にあります。一方、超小型炉の発電コスト約6円/kWhの算定根拠については、参考設計例による概念設計結果に基づく概算コスト計算による結果です。詳細については現時点では公表してはおりませんが、初期コスト約180億円、年間ランニングコスト約5億円で、寿命30年の熔融塩炉を同一建屋で3世代稼働させた場合の総コストを総発電量で除した値となっています。

(その3)使用済み核燃料処理の容易さ

原子力のもう一つの課題は使用済み燃料の処理です。固体燃料の再処理は使用済み燃料の粉砕処理から始まり、硝酸で溶解し、さらに様々な複雑な化学処理を経て再び固形燃料が成形されます。一方、液体使用済み燃料は元々液状なので溶解処理が不要であり、そのまま再処理が出来るため処理工程を大幅に短縮・単純化出来ます。さらに、熔融塩液体燃料を使うことにより最も危険な長寿命高レベル放射性廃棄物であるマイナーアクチニド(MA)を現行の千分の一程度まで減容できます。

(その4)核兵器廃絶への道

トリウムを燃料とする熔融塩炉は核兵器製造に必要なプルトニウムを作らないので、保有国が核武装する恐れがありません。そのため安心して世界中で建設することができます。加えて液体燃料を用いるため、トリウムに替えてプルトニウムを燃料に用いることで、プルトニウム消滅を可能にする現時点で考えられる唯一の炉でもあります。
当社初代社長古川和男博士はトリウム溶融塩炉がこれらの問題を解決できることをその著書「原発安全革命」(文藝春秋新書 2011/05)で示しました。
今年に入り、米国エネルギー省(DOE)が溶融塩炉開発の産学官合同のチームに初年度600万ドルの支援を決めたことを契機に、今年は世界的な溶融塩炉開発の流れが出てくると考えられます。
TTSは、これまで溶融塩炉開発に具体的に正面から取り組んできた日本で唯一の企業です。
これから本格化する世界の熔融塩炉開発の流れと共同歩調を取り、日本の溶融塩炉開発をリードします。
原理的安全性
原子炉の安全性確保の為の条件は、
(1)緊急時の炉の確実な停止
(2)核物質から放出される崩壊熱の除去
(3)放射性物質の外部流出の防止
の三つです。液体燃料原子炉は炉心直下に冷却機能を備えたドレンタンクを備えます。大規模地震発生や津波襲来等の緊急時に、液体燃料を炉心から地下ドレンタンクへ排出すると、核反応は直ちに停止します。ドレンタンク内の液体燃料は無電源で冷却され、崩壊熱が除去されると共に凝固します。万一原子炉が破損しても放射性物質は外部に流出しません。凝固した燃料は緊急事態解除後溶解して原子炉に戻します。
使用済み核燃料処理の容易さ
原子力のもう一つの課題は使用済み燃料の処理です。固体燃料の再処理は使用済み燃料の粉砕処理から始まり、硝酸で溶解し、さらに様々な複雑な化学処理を経て再び固形燃料へ成形されます。一方、液体使用済み燃料は元々液状なので溶解処理が不要であり、そのまま再処理が出来るため処理工程を大幅に単純化出来ます。さらに、溶融塩液体燃料を使うことにより最も危険な長寿命高レベル放射性廃棄物であるマイナーアクチニドの消滅が可能になります。

熔融塩液体燃料炉の歴史

原子力開発の黎明期に米国では固体燃料と並んで液体燃料も対等に検討されました。最も有名な熔融塩液体燃料炉は米国オークリッジ国立研究所所長を務めたアルヴィン・ワインバーグ博士主導により1965年に建設されたトリウム熔融塩実験炉MSREです(図1)。4年間の連続無事故運転に成功し、熔融塩液体燃料炉に必要な基礎技術が確立されました。しかし、固体燃料と液体燃料の技術基盤が異なることに加え、トリウムはプルトニウムを生まないためトリウム熔融塩炉は軍事的に無価値であるという理由で、1976年に研究開発は中止されました。一方日本では、古川和男博士がトリウム熔融塩炉の研究開発を継続し、日本独自のトリウム熔融塩炉として1万kW の小型炉のmini FUJIと20万kWの標準型炉のFUJIの設計を完成させ、さらにこれらの実現のために当社TTSを設立しました。古川和男博士は2011年12月14日に世を去りましたが、TTSはその遺志を継いで研究開発に取り組んでいます。
図1 米国で1965年にアルヴィン・ワインバーグ博士主導により建設されたトリウム熔融塩実験炉MSRE

熔融塩炉開発の世界の動向:新たな流れが出来つつある

近年、熔融塩液体燃料炉の原理的安全性と使用済み核燃料処理の容易さから熔融塩液体燃料炉が世界的に再評価されています。2011年中国で熔融塩冷却炉からのスタートにより熔融塩炉の本格的な研究開発が開始されました。熔融塩炉は米国でもオバマ政権のクリーン・エネルギー戦略における重要な構成要素と位置づけられ、2016年1月に米国エネルギー省(DOE)は電力会社のサザンカンパニー社、ビル・ゲイツ設立のテラパワー社に加え、オークリッジ国立研究所、米国電力研究所(EPRI)、ヴァンダービルト大学(テネシー州)の産学官連携研究開発プロジェクトに初年度600万ドルの開発費支援を決めました。米国政府が熔融塩炉開発に予算を投じた影響は大きく、今後世界的な熔融塩液体燃料炉開発の大きな流れが出来上がると考えられます。
2020年10月、米国エネルギー省(DOE)は新しい高度原子炉実証プログラム(ARDP)を通じて、7年以内に稼働が見込める実証炉建設予定のテラパワー社とXエナジー社に初期資金として1億6000万ドルを授与しました。今後、DOEは可能な予算として7年間合計32億ドルを投資し、業界パートナーがマッチング資金を提供するとしています。このように、DOEと米国産業界は、原子力エネルギーがクリーン・エネルギーとして、経済面だけでなく環境にとっても重要な原子炉開発であると位置付けています。

RinR」=TTS独自の取り組み:ミニチュア溶融塩燃料炉の核化学反応炉としての実用化

(1ベンチャー企業であるTTSの、原子力開発という世界的事業への参加を可能にする)

トリウム熔融塩炉の開発

地球上に存在する核資源にはウランとトリウムがあります。トリウムからはプルトニウムを生産出来ないため、これまでトリウムは原子炉用燃料としてほとんど使われませんでした。しかし、採掘可能なトリウムは核燃料となるウラン235の何百倍も存在し、平和のための原子力の時代のエネルギー源としてトリウムは有望な核資源です。
TTSは、トリウムを燃料とする熔融塩液体燃料炉であるトリウム熔融塩炉として、最初に2.5万kWの超小型炉商用実証炉を開発し、次いで20万kWの小型商用炉(FUJI)図2)の開発を目指します。トリウム熔融塩炉は安全性に優れ、核廃棄物処分も容易であり、核武装に繋がるプルトニウムを作りません。炉心構造も単純であり、超小型炉の概念設計では発電コスト約6円/kWhを確認しました。本命の小型炉(FUJI)では5円/kWh程度と見込まれ、将来的には4円/kWhをめざします。
 図2TTS設立者の古川和男博士により設計されたトリウム熔融塩炉FUJI
世界的な溶融塩炉開発の流れの中でTTSは独自の取り組みを行っています。それは既存原子炉の固体燃料体の一部をミニチュア溶融塩燃料炉に置換することによる溶融塩液体燃料の実用化です。このミニチュア溶融塩燃料炉を原子炉内核化学反応炉と言う意味のRinR(Chemical Reactor in Nuclear Reactor)と名付けました。(特願2013-243620) TTSはRinRの開発をフロム・スクラッチ(材料からの手作り)でスタートしますが、これは戦後糸川英夫博士がペンシルロケットからスタートし現在の日本のロケット技術の基礎を築いたのと同じ精神に基づいており、米国のスペースエックス社がロケット開発を国家主導ではなく民間主導で進めたのと同じ考えでもあります。
TTSは2015年3月ノルウェーのエネルギー技術研究所(IFE)と契約し、ハルデンにあるOECDハルデン炉プロジェクトと共同でRinRの開発のための試験用原子炉による照射試験体(リグ)の開発をスタートさせました(図2)。OECD ハルデン炉プロジェクトは日本も参加する経済協力開発機構(OECD)18カ国が共同運営するプロジェクトです。ハルデン試験用原子炉は試験用燃料体のデータをオンラインで取得出来る計測系を備えた原子炉であり、核燃料開発の世界的な中心拠点です。TTSは、現在RinRの原子炉内試験へ向けた準備作業を進めており、本年2016年3月に照射試験体(リグ)のモックアップの製作に着手しました(図3)。2016年秋にはノルウェー政府の原子炉内照射実験の認可を取得し、2016年後半にはRinRの本格開発に入る予定です。
図2ハルデン原子炉。2015年3月にTTSはIFEと研究開発契約を締結し、2016年秋にノルウェー政府よりハルデン原子炉による照射試験の認可を得る見込みです。
図3ハルデン原子炉照射試験体(リグ)のモックアップユニットの第1次設計案。TTSのRinR概念に基づき設計された。

TTSが最初に取り組むビジネス:溶融塩燃料材料と炉材料の試験受託

多くの溶融塩炉開発プロジェクトは巨額の資金と長期の研究開発期間により発電炉プラント全体の開発を目指します。一方我々は最初に小規模資金かつ短期間で開発可能な液体燃料体であるRinRの実現に取り組むという独自の取り組みからスタートし、最終的にトリウム溶融塩炉の実現を目指します。RinRで取り扱う燃料材料は特定の組成だけに留まらず、多様な組成の溶融塩燃料を取り扱えます。そのためTTSは世界中の溶融塩炉プラント開発を目指す企業や機関から、ハルデン試験用原子炉を使った溶融塩燃料材料の試験と炉材料の放射線照射下での試験を受託出来ます。このハルデン原子炉とTTS のRinRによる試験受託サービスはTTSが世界に先駆けて取り組む溶融塩炉に関係した最初のビジネスになります。

RinRによる余剰プルトニウムの処理

TTSが取り組むもう一つの課題が余剰プルトニウムの処理です。現在世界にはプルトニウムが約500トン存在し、核兵器への転用が懸念されていますが、その内約47トンを日本が保有しています。ノルウェー政府は核兵器廃絶に向けた活動にノーベル平和賞を授与し、現在も固体燃料によるプルトニウム燃焼処理技術の研究開発を行うノルウェーの企業を資金援助しています。TTSはRinRによるプルトニウム及びマイナーアクチニドの燃焼および消滅のために技術開発についてノルウェー政府の支援を得ることを目指しています。

福島のデブリ処理のための超小型溶融塩炉開発

政府主導で福島第一原子力発電所の廃炉作業が進められています。廃炉に至る一連の作業のうちデブリ処理が最も困難です。デブリは溶融した炉心部材と核燃料から生じた核廃棄物で様々な化学組成を含みます。溶融塩液体燃料炉の特長の一つは核廃棄物の処理の多様性と柔軟性です。デブリ処理として最も有望な方法がハロゲン処理法です。デブリをハロゲンで溶解処理し、プルトニウム及び長寿命マイナーアクチニドの塩化物を分離回収します。それらを塩化物溶融塩に溶解し、RinRに入れてナトリウム冷却原子炉で核反応により燃焼処理します。TTSは福島原発事故の跡地にデブリ処理専用の小型溶融塩高速炉の建設を提案します。日本のナトリウム冷却炉の技術は高速炉もんじゅの建設と共に完成しています。この核廃棄物処理用超小型塩化物溶融塩高速炉の技術開発は発電用トリウム溶融塩炉への技術展開の途上に位置づけられます。

トリウム溶融塩炉の開発

地球上に存在する核資源はウランとトリウムがあります。トリウムからプルトニウムを生産出来ないため、これまでトリウムは原子炉用燃料としてほとんど使われませんでした。しかし、採掘可能なトリウムはウランの約4倍存在し、平和のための原子力の時代のエネルギー源としてトリウムは有望な核資源です。
TTSは、トリウムを燃料とする溶融塩液体燃料炉であるトリウム溶融塩炉として、最初に1万kWの小型炉(mini FUJI)を開発し、次いで20万kWの標準型炉(FUJI)(図4)の開発を目指します。トリウム溶融塩炉は安全性に優れ、核廃棄物処分も容易であり、核武装に繋がるプルトニウムを作りません。プラントの構造も単純であり、発電コストは3円/kWhの低コストを目標にします。
図4TTS設立者の古川和男博士より設計されたトリウム溶融塩炉FUJI。

トリウム熔融塩炉は世界を平和へ導きます

我々は国際紛争などの世界規模の危機の多くは豊かさと貧しさの間に生じた大きな経済格差が原因であると考えます。この格差を解消するための手段の一つが低コストエネルギーの供給です。低コストのエネルギーがあれば砂漠化が進む地域で水を作ることが出来ます。また、低コストのエネルギーがあればその地域に産業を起すことも出来、貧困の問題を解決できます。
トリウム熔融塩炉は世界中のあらゆる地域へ低コストエネルギーの供給を可能にします。トリウム熔融塩炉はトリウムを燃料としているため核武装に繋がるプルトニウムを作りません。トリウム熔融塩炉は貧困を解消します。そして、トリウム熔融塩炉は世界を平和へ導きます。

①RinR:Chemical Reactor in Nuclear Rector

ベンチャー企業であるTTSの、原子力開発と言う世界事業への参加を可能にする
■ミニチュア溶融塩燃料炉の核化学反応炉としての実用化
■ノルウェーOECDハルデン炉プロジェクトとの提携による開発
■世界からの溶融塩炉用燃料の試験受託及び溶融塩炉用材料の試験受託
■プルトニウム及びマイナーアクチニドの燃焼・消滅処理技術の開発
開発費10億円 2020年完成

②超小型溶融塩高速炉

超小型塩化物溶融塩高速炉(出力0.2万kw)
■世界発の溶融塩液体燃料原子炉の実用化。
■福島デブリ処理
開発費100億円  2022年完成

③miniFUJI

小型トリウム溶融塩炉(電気出力1万kw)
■発電用溶融塩炉の開発
開発費500億円 2025年完成

④FUJI

■低コスト(目標3円/kwh)の発電用原子炉の開発
トリウム溶融塩炉(電気出力20万kw)
開発費2000億円 2030年完成